研究概要 |
本教室では昭和58年に家兎で頭蓋咽頭管口を利用して薬液を視交叉槽に注入する方法を開発し発表した. この方法を用いて視交叉槽に0.1%PGF_2α0.5mlを注入するとヒトのくも膜下出血時にみられるものと同様のECG変化, すなわち徐脈, 上室性または心室性期外収縮, ST上昇または下隣ときに心室性頻拍などが出現する. このとき同じ場所に1%リドカイン0.5mlを注入すると徐脈, 不整脈が消失しST変化に徐々に回復傾向を示す. このとき交叉熱電対の電極を脳底部附近の脳実質に刺入して脳血流量の変化をみていると, PGF_2αが注入された. 直後には血流が減少し徐脈が生じ, 血流が増加傾向になると不整脈が出現することがわかった. 昭和62年9月に科学研究費によって水素クリヤランス法による血流計を購入してからは下記の実験を行った. 1.エーテル麻酔下の家兎17羽を用いて人工呼吸を行い, 頭頂部から1側に交叉熱電対の電極を挿入固定し, 反対側に水素クリヤランス電極を挿入固定し, 先端はいづれも脳底部脳実質内に位置せしめ, まず過換気にして交叉熱電対による脳血流が明らかに減少したのを確認したのち, 血液ガス分析を行い, 正常時の脳血流量を水素クリヤランス法で測定し(60-70ml/100g), ついで視交叉槽に0.1%PGF_2α0.5mlを注入し, 不整脈が出現した時点で脳血流量を水素クリヤランス法で測定した. 注入操作に伴う出血がなかった10羽のすべてで水素クリヤランス法による脳血流は10-20%減少した. 2.1.0%リドカイン単独注入時の脳血流量の変化をみるため家兎15羽を用いて水素クリヤランス法による脳血流量の変化をみているが, 最初は成績が一定しなかったが最近の4羽では注入直後に血流が増加した. 今後さらに例数を増加するつもりである.
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