研究概要 |
前年度、私達は、ケタミン、ドロペリドール、フェンサイクリジンなどの全身麻酔薬が、(1)電位依存性Caチャンネルを阻害しないが、(2)ニコチン受容体ーイオンチャンネルを介する細胞内へのNa流入、並びに、(3)電位依存性Naチャンネルを介する細胞内へのNa流入を抑制することによって、結果的には、カルバコール、ベラトリジンによるCa流入、カテコールアミン分泌を低下させることを示した。本年度は、 1.^3Hーフェンサイクリジン結合:ニコチン様受容体ーイオンチャンネル複合体近傍(Kd4.3μM)並びに、電位依存性Naチャンネル近傍(Kd77.4μM)に結合した。この結合は、カルバコール、ムスカリン、クラレ、ヘキサメトニウム、テトロドトキシン、ベラトリジン、αーサソリ毒では阻害されなかった。ドロペリドール(100μM)、ケタミン(100μM)は、結合を40.3、80.1%まで低下させた。 2.電位依存性Naチャンネル:^3Hーサキシトキシニン結合はkd5.8nM、Bmax427.2fmols/10^7cellsであった。ケタミン(1mM)は結合を阻害しなかった。 3.ニコチン様受容体:^3H-l-ニコチン結合のkd(50μM)は、l-ニコチン作用のEC_<50>(16μM)とほぼ一致した。結合は、saturable,reversibleであり、association dissociationのhaef-timeはそれぞれ90秒であった。ケタミン(100μM)は結合に対して影響をあたえなかった。 以上、1.全身麻酔薬は、ニコチン様受容体ーイオンチャンネル複合体並びに、電位依存性Naチャンネルに機能的に連関した部位に結合し細胞内へのNa流入を阻害するが、その正確な結合部位は同定し得ないこと、2.ドロペリドール、ケタミンは、それぞれ1度の差はあるものの、フェンサイクリジンと結合部位を共有することが示された。
|