研究概要 |
膀胱癌発生頻度の男性優位性の原因を検討する目的で、男性ホルモン制御系とラット膀胱発癌との関係を検討した。膀胱癌誘発物質としてはN-butyl-N(4-hydroxybutyl)nitrosamine(以下BBNと略す)を0.05%水道水として投与し、テストステロンの抑制法としては両側除睾術およびgonadotropin- releasing hormone analogue(以下LH・RH analogueと略す)、1mg/kgを4週毎に皮下投与した。ラットはWister系9週令を用いた。 実験1:下垂体一睾丸系におけるテストステロン制御への影響を検討した。LH・RH analogue投与にて、血清中LH,FSHおよびテストステロンは投与開始1週までは上昇し、その後、テストステロンは除睾状態まで低下した。また、この蛍光にBBNは何ら影響を与えなかった。 実験2:143尾の雄性ラットを次の5群に分けた。1群:BBN単独投与(N=45)。2群:BBN+LH・RH analogue(BBN発癌initiation期)(n=25)。3群:BBN+LH・RH analogue(BBN発癌promotion期)(n=25)。4群:BBN+LH・RH analogue(発癌全期間)(n=24)。5群:BBN+両側除睾術(n=24)。 結果:テストステロンの抑制によりBBN発癌が抑制されたが、その抑制方法により発癌の抑制状態が異なっていた。即ち、LH・RH analogueを発癌のpromotion期および全期間にわたって投与した群の発癌抑制が最も強力であった。このことは単にテストステロンの血中濃度の低下のみが発癌抑制いに関与しているのではなく、広く視床下部-下垂体-睾丸系の男性ホルモン抑制系の関与が示唆された。これはLH・RH analogueの発癌抑制における直接効果の検討とともに今後、十分検討すべき問題であると考えられた。
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