1.生後1〜3日のマウスに男性ホルモンおよび女性ホルモンを投与し生長後の前立腺を形態学的に検討したところ、diethylstilbestrol(DES)投与群では、前葉および後側葉の腺管分枝構造は有意に減少しており、オイル投与群の約25%であった。この変化は、dihydrotestosterone(DHT)の同時投与によって防止できず、約30%の腺管分枝状態であった。更に、DES投与群およびDHTの同時投与群の後側葉においては、結節状の異常腺管構造を40〜90%に認めた。DHT単独投与群およびコントロール群においてはこの変化は認めなかった。組織学的には悪性所見は認めないものの腺管腔の狭い腺組織により形成されていた。以上より、生下時において性ホルモンの投与がその後の前立腺の生長に多大な影響を与えることが示唆された。以上をとりまとめ昭和63年国際内分泌学会(京都)にて発表し、現在論文作製中である。 2.dimethylaminobiphenyl(DMAB)をマウスに投与して前立腺発癌を検討した。抗男性ホルモンおよび女性ホルモン投与後、男性ホルモンにより前立腺を再生させると同時にDMAB(30mg/kg)を投与するサイクルを11回(1サイクル:1ヶ月)施行した。10回終了時において女性ホルモン投与群の前立腺を組織学的に検討したが、微小解剖による巨視的な腺管構造に変化はなく、現在投与開始12ヶ月になり各実験群の前立腺を形態的に検討中であり、このマウス発癌モデルの有用性についてさらに検討を加える予定である。
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