研究概要 |
現在、ヒトの免疫学的男性不妊症に対する有効な治療法はほとんど未解決のままである。本研究は、過去10年来私達が得てきた、モルモットの実験的自己免疫性精巣炎(EAO)の発症阻止と治療に係わるサプレッサ-T細胞やT細胞因子の作用に関する研究成果を基礎にして、免疫学的男性不妊症に対する抑制性T細胞因子療法の開発を、より詳細な解析が可能なマウスを用いて企図したものである。免疫学的不応答が誘導された生体内に生成する、抗原共異的サプレッサ-T細胞によって産生される抑制性因子を用いる免疫療法は、それが免疫系に内在する細胞性因子であるが故に、通常の免疫抑制剤のような造精機能障害をひき起こす危険がないと思われる。本研究によって得られた成果の主なものは、1.EAO発症阻止能力をもつサプレッサ-T細胞を誘導するマウスの実験系の確立(日本病理学会誌79:219-219,1990)。2.サプレッサ-T細胞株の樹立(未発表)。3.抑制性T細胞因子の効果を確認するためのin vivo検考系の確立:(1)発症率のきわめて高いマウスEAOモデルの確立(日本免疫学会記録16:547-547,1989:投稿中)。(2)EAO受身伝達能をもつエフェクタ-細胞株の樹立(抑制性因子による効果期EAOの抑制の検定に用いられる)(Japan Society for Basic Reproductive Immunology Proceedings of the 3rd Annual Meeting:33-41,1988)。(3)再現性と感度において優れたマウス抗精子抗体価測定のためのELISA法の確立(Am.J.Reprod.Immunol.21:9-15,1989)。 本研究は目下、抑制性T細胞因子生産能力をもつT細胞ハイブリド-マの確立、サプレッサ-T細胞からの因子の抽出・精製および効果検定を主題としており、さらに最終目標である抑制性T細胞因子の遺伝子クロ-ニングに向けて進行中である。
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