研究概要 |
昨年度まで尿中の酸性ムコ多糖を分離・精製してきたが、今年度はイオン交換カラム、ゲル濾過で得られたコンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸を共に含む酸性ムコ多糖分画からさらにこれらの酸性ムコ多糖を互いに分離・精製する方法を確立した。まず、尿を分子量3万の膜で限外濾過および濃縮し、0.05M燐酸ナトリウム緩衝液で平衡化しておいた弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させ塩化ナトリウムの濃度勾配で溶出、ナトリウム濃度の0.055Mと0.7Mの間にコンドロイチン硫酸とヘパラン硫酸が含まれることを確認した。次にこの分画を強塩基性イオン交換カラムにかけ塩化ナトリウムの濃度勾配で溶出した。ナトリウム濃度11M以下ではヘパラン硫酸のみ、1.4Mと1.7Mの間の分画にはコンドロイチン硫酸のみが含まれていた。さらにヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸を精製するためにエタノ-ル分画法を用いた。ゲル濾過にて得られた各分画を純粋透析、凍結乾燥し、5%酢酸カルシウムを含む0.5M酢酸溶液に溶解、上清に30%のエタノ-ルを加え、遠沈し沈渣を集めた。さらに上清に40,50,60%の濃度になるようにエタノ-ルを加えてゆき沈渣を集めその分画を電気泳動で分析するとエタノ-ル濃度30%ではヘパラン硫酸のみが、40%ではヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸が、50%と60%ではコンドロイチン硫酸のみが同定された。尿60リットルから尿中ヘパラン硫酸4.7mg、尿中コンドロイチン硫酸33.6mgが得られ、乾燥重量あたりのタンパク質含量はそれぞれ4.5%と3.0%、ウロン酸含量はそれぞれ29%と30%であった。 この方法によって尿中の酸性ムコ多糖の蓚酸カルシウム結晶成長に対する影響をヘパラン硫酸、コンドリチン硫酸それぞれ単独に、またより正確に評価できるようになったと言える。
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