ヒト羊膜上皮細胞における抗原解析と腫瘍マーカーへの臨床応用

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62570742
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 稲葉 憲之 千葉大学, 医学部, 講師 (70114238)
• 研究分担者: 上村 几尋 ミドリ十字, 中央研究所, 部長 ; 深沢 一雄 千葉大学, 医学部, 助手 (00189911)
• キーワード: 羊膜 / 羊膜上皮関連抗原 / 腫瘍マーカー / モノクローナル抗体 / 癌・胎児胎盤抗原

研究概要

羊膜上皮と悪性腫瘍との「共通抗原性」に関して以下の3点を明きらかにした。1.各種癌培養株由来モノクローナル抗体の羊膜上皮培養株における反応性:10種の癌培養株、即ちPC-1(低分化型肺扁平上皮癌)PC-10(中分化型肺扁平上皮癌)、PC-9(高分化型肺腺癌)、HEp-2(咀頭扁平上皮癌)、TE-9(食道扁平上皮癌)、KATO-II(胃印環癌)、COLONCA(結腸腺癌)、HEK(肝内胆管腺癌)、DANC-1(膵臓癌)、ZR75-1(乳腺癌)を免疫原として22種類のモノクローナル抗体(μAb)を作製し、培養Fl,WISH株との反応性をELISA法にて検討した。全てどちらかの羊膜上原培養株との反応性を有し、5種類のMAbを除いた残り全てのMAbはいずれか一方の培養株とのみ反応し、羊膜上皮-悪性腫瘍共通抗原性1と共に、2種類の培養羊膜上皮間でのヘテロジェネエティが示唆された。2.各種腫瘍マーカーとヒト胎盤における免疫組織学的検索:正常分娩あるいは治療的人工妊娠中絶施行時に採取した胎盤及び胎児付属物(臍帯、羊膜、脱落膜)のエタノール・酢酸固定、パラフィン包埋標本において、CA125、CA130、CA19-9、CA50、KMO1及びTAC41の局在をABC法にて行った。これら全ての腫瘍マーカーは羊膜上皮細胞質にて明瞭な局在が認められ、これらの腫瘍マーカーが一種の羊膜皮な関連抗原である事が判明した。3.各種羊膜上皮関連抗原の妊娠関連体液中濃度:10例の正常妊婦より満期妊婦血清、分娩直後母体血、羊水及び臍帯動静脈血を採取、CA125(RIA)、CA130(RIA)、CA19-9(EIA)、CA-50(EIA)並びにTAC41(R-PHA)を測定した。これらの羊膜上皮関連抗原は全て羊水中で異常高値を示し、一方分前母体血、臍帯動静脈では正常域にあり、羊膜で産生されたこれらの羊膜関連抗原が容易に羊水中に移行している事が明きらかになった。
これらの羊膜関連抗原の妊娠時における生物学的意義の解明が今後の重要な課題の一つである。

研究成果

• [文献書誌] 稲葉憲之: 基礎と臨床. 21. 4203-4207 (1987)
• [文献書誌] 稲葉憲之: Oncology ＆ Cemtherapy. 3. 399-404 (1987)
• [文献書誌] Fukazawa,Ichio: Arch Gynecol Obstet. 243. 41-50 (1988)
• [文献書誌] Fukazawa,Ichio: Arch Gynecol Obstet. 243. 61-68 (1988)
• [文献書誌] Fukazawa,Ichio: Arch Gynecol Obstet. 243. 69-81 (1988)
• [文献書誌] 稲葉憲之: 日本外科連合学会誌. 18. 33-36 (1989)
• [文献書誌] Itahashi,Koshirou: Arch Gynecol Obstet. 243. 145-155 (1988)
• [文献書誌] Itahashi,Koshirou: Arch Gynecol Obstet. 243. 191-197 (1988)
• [文献書誌] 稲葉憲之: Oncologr ＆ Chemotherapy.
• [文献書誌] 稲葉憲之: Oncologt ＆ Chemotherapy.