研究概要 |
臨床的に高prolactin(PRL)血症にしばしば性機能障害を伴うが, その病態に関しては不明な点が多い. それ故PRL血症の間脳, 下垂体に及ぼす影響を探究した. <方法>wista系成熟雌ラットを去勢後2週間の時点でovinePRL5mg/kgを8h毎に4回皮下注し, 最終投与後2hに実験に供した. <成績>(1)OPRL投与による血清rPRL値の変化をみたが, 対照11.5±3.2ng/mlと比較しPRL投与群では0.6±0.1ng/mlと有意(PL0.01)に低下した. また, 下垂体前葉内PRL含量も投与群において対照の57%と著減した. (2)PRL投与群では血清LHRH値は3.2±0.4pg/mlであり対照(11.0±3.7ng/ml)より有意(PL0.05)に低下した. 一方, 視床下部内LHRHの総含量または, 分布はPRL投与による影響を受けなかった. (3)視床下部組織のinvitro incubation実験ではPRL投与を受けた群はLHRHの分泌が対照の56%に低下していた. (4)PRL投与ラットでは, 血清LH値は2.3±0.5ng/mlであり対照の3.6±0.3ng/mlに比較し有意(PL0.05)に低下した. 他方, FSH値に関しても投与群18.6±1.1ng/mlであり, 対照(22.7±1.5ng/ml)に比し有意な低下を示した. (5)下垂体LH含量はPRL投与群では6.3±0.4μg/glandであり対照の3.7±1.0より有意に増量していた. (6)LHRH0.5μgをkg皮下注し, 投与前後での血清中LH, FSHを測定したが, PRL投与群, 対照群とも反応性分泌を認めた. <結論>急性高PRL血症では, 視床下部LHRH含量, 分布は不要だがLHRHの放出が抑制され, その結果下垂体前葉からのLH, FSH分泌が低下する, 一方, 下垂体LH含量はLHの放出抑制のため二次的に増加する. なお, LHRHに対する下垂体前葉の反応性は高PRL血症では保持されている. 以上より, 急性高PRL血症での中枢における性機能障害の機序として視床下部からのLHRH放出抑制がprinargであり, 二次的に下垂体からのgonadotrpin分泌が低下することが明白となった.
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