研究概要 |
(1)基礎的な研究としてはプロラクチンとゴナドトロピン分泌の機能的関連をみる目的でラットの下垂体細胞培養系を用い,プロラクチン添加によるLHとFSHの分泌に及ぼす影響を検討した。するとプロラクチンは10〜1000ng/mlの範囲で用量反応的にLHの分泌を促した。プロラクチンの硬化はGnRHキエストラジオ-ル存在下で一層増強した。またプロラクチンは培養細胞内のLH含量をも高める事より,LHの産生を高めるものと推定された。プロラクチンはFSH分泌をも亢進させることが示された。これらの結果よりプロラクチンは下垂体レベルではparacrine機序でゴナドトロピンの分泌を高めていることが示唆された。 (2)ダナゾ-ルは子宮内膜症に繁用されている薬剤であるが,その作用機序の詳細に関しては不明な点が多い。そこで下垂体培養系においてダナゾ-ルの作用を検索した所,ダナゾ-ルはLH分泌には影響を与えなかったが,FSH分泌は10^<-5>〜10^<-9>Mの範囲で用量反応的に刺激された。またGnRHにより誘導されたLHとFSH分泌に関してはダナゾ-ルはともに抑制的に作用した。興味あることにダナゾ-ルは用量反応的にプロラクチン分泌を抑制した。ダナゾ-ルのプロラクチン分泌の抑制作用が本剤の乳腺線維のう腫に対する有用性に関連するものと考えられる。 (3)子宮内膜症は高率に不妊を伴うためその不妊機序の解明は重要な課題となっている。子宮内膜症例では黄体期のプロゲステロン分泌が低下しており黄体機能不全の傾向がみられた。またTRHに対する過剰反応を呈するいわゆる潜在性高プロラクチン血症例が高頻度でみられた。しかし原因不明の不妊婦人の頻度と同程度であり,しかも黄体機能とプロラクチン分泌との明らかな関連性も見い出せず,プロラクチンは子宮内膜症に伴う黄体機能の障害の原因因子とは考え難いと結論された。
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