研究概要 |
卵巣顆粒膜細胞のステロイド産生能を調節する因子に関する研究の一環としてfollicle stimulating hormone:FSHのヒト培養顆粒膜細胞の機能におよぼす影響を検討して以下の研究成績が得られた. 1.ヒト顆粒膜細胞培養系の確立:自然排卵および排卵誘発療法を受けた20例の卵胞により得た吸引液をコラーゲン処理し顆粒膜細胞を分離純化した. 2.ヒト培養顆粒膜細胞の機能形態学的検討:分離純化したヒト顆粒膜細胞を培養液(Waymouth:Hanks:FCS=6:3:1)中で95%air, 5%CO_2の環境下で培養すると120分後にcell attachmentは100%となり7日間でconfluenceに達した. 培養液にFSH(25mIU/ml)を添加すると細胞増殖に明らかな促進がみられた. 3.ヒト培養顆粒膜細胞のステロイド産生能とFSH:培養顆粒膜細胞でのステロイド産生能とFSHとの前培養時間の関連をtestosteroneからestradiolへの転換(ng/10^5cells/hour)を指標として検討した. FSHとの前培養時間が長くなるに従ってestradiolへの転換は有意に増加し, 24時間の培養後には培養前の約350%に達していた. 4.ヒト培養顆粒膜細胞内Ca濃度とFSH刺激:細胞内のCa^<++>濃度をFura-2とFura-2AMとの間に生じる反応を蛍光強度として定量する方法で測定した. FSHの培養液添加量を0〜50mIU/mlとしたところ, 25mIU/mlまでは容量反応性に細胞内Ca^<++>濃度の上昇を認めた. 以上よりヒト培養顆粒膜細胞は顆粒膜細胞でのステロイド産生を調節する因子を研究する材料として細胞機能形態学的に満足しうるものであるといえる. 本実験系において得られた新しい知見の1つとしては, FSH刺激により細胞内Ca^<++>濃度が上昇しこれがtestosterone→estradiolの転換に作用するaromatase活性を亢進させるトリガーとして作動する反応が顆粒膜細胞で起こっていることが明らかにされた.
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