研究概要 |
妊娠初期(7週〜11週), 中期(20週〜23週), 分娩時(37〜41週)の妊娠各時期のヒト胎盤組織を用いてのEGFのbunding studyの結果, 以下のことが明らかとなった. 1.いずれの時期の胎盤ちも2種類の結合部位があり, その解離定数は上記3stageで有意差を認めない. 2.結合部位数は妊娠の進行とともに増加する. (High affinity sitesで, 初期0.72±0.18pmol/mg protem, 中期1.02±0.10pinal/mg protein, 末期1.89±0.21pmal/mg protein). これらのEFG結合部位数は他の臓器と比べて極めて高値であった. 更に, ヒト胎盤ではEGFの受容体はおもにTrophoblashc cellに存在すると報告すると報告さているので, 我々は胎盤からTrophoblastsを単離し, 初めて単離したTrophoblastsを用いてbinding assayを行なった. その結果, 単離したTrophoblastにおいても全胎盤を用いた場合と同様妊娠の進行とともに結合部位数の増加を認めた. 但し単離したTrophoblastにおける結合部位数は全胎盤を用いた場合の7分の1と低値であった. 同時に我々はEGF受容体のメッセンジャーRNAをも測定した. Dot blotting後hybrcdization時のプローブにはEGF受容体のCDNAであるpE7とガン遺伝子の1つでその産生物が受容体の細胞質内部とhomologyのあるv-erb-Bとを用いた. どちらのプローブを用いた場合も, EGF受容体のmessageは妊娠の進行とともに増加し, その増加率はEGFの結合部位数の増加と比例していた. 以上の結果より, 今までの報告では, 妊娠初期, 中期そして後期に結合部位数が最大であると, 方法により結果の異なっていた妊娠中のEGF受容体数の変動について, 後期に結合部位が増加するばかりでなく, EGF受容体の合成も平行して増加していることを明らかにした. 今後は, Narthern Blottingの方法を改善して, メッセンジャーRNAの質的な分析を行なうと共に病的な胎盤組織についてもEGF受容体の発現を検索したい.
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