生殖機構における甲状線ホルモンの作用機作に関する分子生物学的研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62570758
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 足高 善彦 神戸大学, 医学部, 助教授 (10030959)
• 研究分担者: 上田 康夫 神戸大学, 医学部, 助手 (20168636) ; 西村 隆一郎 神戸大学, 医学部, 助手 (00127383) ; 丸尾 猛 神戸大学, 医学部付属病院, 講師 (60135811) ; 望月 眞人 神戸大学, 医学部, 教授 (80030922)
• キーワード: 甲状線ホルモン / 核レセプター / ヒト胎盤絨毛細胞 / 機能分化 / ブタ顆粒膜細胞 / 抗核レセプター抗体

研究概要

1.ヒト胎盤絨毛細胞における甲状線ホルモン(T_3)の作用機構
(1)ヒト絨毛細胞核内甲状線ホルモンレセプター(NT_3R)の動態
先ず絨毛細胞核を得、そこから0.4MKOlで核蛋白を抽出した。核蛋白と^<125>I-T_3の反応に関する昨年度の基礎実験成果に基ずき、妊娠各時期胎盤絨毛より得た核蛋白と^<125>I-T_3を反応させてScatchard解析を行った。その結果、妊娠末期絨毛(n=11)ではKa:6.8×10^9/M、capacity:63.8fmol T_3/mgDNAで、Ka値はラット肝細胞核で報告されている値に類似していたが、capacityはラットの場合の凡そ1/12と微量であった。しかしながら妊娠初期、中期絨毛(n=6)ではKa:6.0×10^9/M,capacity:118.3fmol T_3/mgDNAと高値で、絨毛のagingや機能分化に甲状線ホルモンが関与している可能性が示唆された。未だ症例は少ないが、未治療の甲状線機能亢進症由来絨毛ではcapacityが大きく、治療例では減少していることも判明している。今後は糖尿病やIUGR例でNT_3Rの動態がどのように変化するかを追究する予定である。
(2)抗NT_3R抗体の作成:
昨年度に報告した^<125>I-T_3-PALや^<125>I-T_4-PAL紫外線照射法でNT_3Rとcovolent biindingさせ、SDSPAGE法でNT_3Rの分子量を測定した結果、凡そ47Kであることが判明した。そこでこの分画を抽出し、Freuno's adiuvantと共に家兎に投与してポリクローナル抗体を作成した。得られた抗体の免疫組織学的検討で、絨毛細胞層と強く反応し、絨毛間質部とも弱い反応が観察された。さらにヒト卵巣との反応では卵巣顆粒膜層ならびに黄体で強い反応が観察された。現在マウス骨髄腫細胞を利用してモノクローナル抗体を作製中である。
2.ブタ顆粒膜細胞に対する甲状線ホルモンの作用機序
上述のモノクローナル抗体が得られ次第、Steroidogenesisと卵巣の形態学的変化との関連性について検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Ashitaka,Y.,et al.: Endocrinologia Japonica. 35. 197-206 (1988)
• [文献書誌] Maruo,T.: Folia Endocrinol. 64. 1214-1222 (1988)
• [文献書誌] Nishimura,R.,et al.: Endocrinology. 123. 420-425 (1988)
• [文献書誌] Maruo,T.,et al.: Acta Endocrinologica(Copenh). 117. 230-240 (1988)
• [文献書誌] Ishikawa,J.;Nishimura R.,et al.: Acta Pathol.Jpn.38. 113-120 (1988)
• [文献書誌] 望月眞人、足高善彦: 産と婦. 55. 1157-1165 (1988)
• [文献書誌] 足高善彦、望月眞人: 産婦の実際. 37. 1973-1979 (1988)
• [文献書誌] 望月眞人、足高善彦: 周産期医学. 18. 963-967 (1988)
• [文献書誌] 足高善彦: Modern Physician. 8. 693-696 (1988)
• [文献書誌] 足高善彦: Medical Tnibcme(Perinatal Medicine). 2月25日号. 25-26 (1988)
• [文献書誌] Ashitaka,Y.;Maruo,M.;Takeuchi,Y.;Nakayama,H.;Mochizuki,M.: "Human placenta is a target organ of thyroid hormones.in"HUMAN REPRODUCTION-Current Status and Future Prospect"" Excerpta Medica,Amsterdam-New York-Oxford, 822 (1988)
• [文献書誌] Katayama,K.;Maruo,M.;Ashitaka,Y.;Mochizuki,M.,et al.: "The significance of thyroid hormones in the maintenance of pregnancy.in"HUMAN REPRODUCTION Current Status and Future Prospect"," Excerta Medica,Amsterdam-New York-Oxford, 597-598 (1988)
• [文献書誌] Maruo,T.;Hayashi,M.;Mochizuki,M.: "Thyroid hormone as a biological amplifier of the actions of pregnancy.in"HUMAN REPRODUCTION-Current Status and Future Status"." Excerpta Medica,762 (1988)
• [文献書誌] 足高善彦: "1988年今日の治療指診(第30巻)「不正性器出血」" 医学書院, 2 (1988)