研究概要 |
1.マクロファージ分離法の確立:最も効率良く, しかも簡便な分離法として腹水から比重遠心法により, 単核細胞を分離, さらにこれを1時間培養しプラスチックへ付着させた時の回収率が最も良かった. ただし, 症例により腹水中の癌細胞, マクロファージ, 線維芽細胞等の比率は異なり, 癌細胞が非常に多い腹水中ではプラスチック付着細胞として癌細胞の混入率が高くなる. 従ってマクロファージの多い腹水を選択する必要性が明らかになった. 2.腹水中マクロファージよりの腫瘍増殖抑制性因子に関する検討:IFN-γを刺激剤とする事により, 腹水マクロファージから抑制性因子が放出され, Hela細胞の増殖が抑制される現象を用いて以下の知見を得た. 1).Clonogenic Assayにおける腫瘍増殖抑制効果はマクロファージの数に比例する. 2).腹水マクロファージによる抑制性因子の産生は1000単位のIFN-γでは15分間の刺激時間で充分に発現するが, 100単位のIFN-γでは同一の腫瘍増殖抑制効果を得るためには3倍の時間を要した. 3).腹水中の線維芽細胞, リンパ球, 癌細胞を用いた実験ではHela細胞の増殖抑制効果は認められず, 抑制性因子はマクロファージより産生されている事が確認された. 4).抑制性因子の産生はIFN-γによる刺激から8時間後に開始され12時間後にピークに達する事が分った. 5).抑制性因子の産生は蛋白合成阻害剤, m-RNA合成阻害剤により抑制され, 何らかのペプチド或いは, 蛋白である事が示唆された. しかし, マクロファージより産生される種々の酵素類やスーパーオキサイドとは異なるものである事が分かった. 3.腹水中マクロファージ由来の腫瘍増殖活性因子に関する検討:1).無刺激のマクロファージの存在はHela細胞の増殖を促進する場合が多いが稀れには抑制的に働く腹水マクロファージも存在した. 腹水により, マクロファージの腫瘍増殖活性作用に差があり, 一様に腫瘍増殖因子を上清から得る事が困難で今後の検討を要する点である.
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