研究概要 |
1.Ca摂取と妊娠中毒症 Ca含有食品としては, 牛乳および乳製品, 小魚, 卵類, 海藻類などが挙げられる. 沖縄県におけるこれらCa含有食品の摂取分布は他県におけるそれと殆ど大差ない程接近している現況であるが, 妊娠の摂取食品については必ずしも一定していない, われわれの今回の調査で本県における妊婦の各地域別Ca摂取率もまた必ずしも一定の過不足の傾向は窺えず, したがってCa含有食品の摂取と妊娠中毒症発症率や高血圧合併妊婦(混合妊娠中毒症)との一定の相関は得られていない. 今後さらに例数を増やし, Ca摂取と中毒症発症の地域分布の因果関係の分析を続けて追求する予定である. 2.動物実験-妊娠ラットにおけるCa摂取と血圧および血管感受性 妊娠ラットを, 2%Caの餌育食を与えた群(Ca rich群)と0.02%Ca餌育食を与えた群(Ca poor群)に分けた実験で, 妊娠13日目の基礎平内動球圧を測定した結果では, 両群間に差異を認めなかった. しかしAngiotesinII(A-II)を点滴静注して血圧を20mmHg, 上昇させるのに必要なA-II量/体重, すなわちeffective pressor dose(EPD)を計測して血圧反応性を検討してみると, Ca rich群の226.0mg±20.0ng/kg/minに比べて, Ca poor群では138.8ng±14.0ng/kg/minと有意の低下がみられた. 3.既往に腎疾患や高血圧症状, 妊婦中毒症のあったいわゆるhigh riskの妊婦に妊娠のfirst trimestesterからCa剤(200〜400mg)を投与してその後の妊娠経過を追ってみると, 妊娠中毒症の発症率は9.3%で, 対照の非Ca投与群の28.6%に比し有意に低率であった. 両群の新生児生下時体重に差はなかった. 以上の結果より, Caは少なくとも妊婦においては血管反応性を鈍化させて, 妊娠中毒症ことに高血圧の発症を予防し得ることが示唆された.
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