1. 沖縄県における食生活は、特にCa含有食品摂取の実態調査については、全般的に食塩の摂取率は多い傾向にあるが、海草類、豆製品などCa含有食品は当県では比較的多く摂られており、妊婦においても血中Ca濃度は妊娠中毒症と健康妊婦との間に差は現段階ではみられていない。今後は、さらに腸管におけるCaの吸収に必要な担体蛋白質の生成に必要なビタミンDの摂取との関係も検討したい。 2. 高血圧発症の要因として内因性ジギタリス様物質の存在が示唆されている。これは体液量の増加に伴い分泌され、血管平滑筋細胞のNa-KATPaseを抑制し、NA-Ca交換機構を経て細胞内Caイオン濃度の上昇により血管が収縮し血圧の上昇を引き起こすというものである。この仮設に基づき、妊娠中毒症患者、本態性高血圧患者、正常血圧者の赤血球膜Na-KATPaseの活性の比較、さらに妊娠前期・中期・後期のNa-KATPase活性の傾向より妊娠中毒症の発症予知について検討した。あわせて同一患者の血漿を用いてラット胸部大動脈の血管収縮の反応性の違いを検討した。サンプルをATPを含む反応液に37°C、30分間加温して反応させる。Fiske-Subbarow法より遊離した無機リンをLowry法よりサンプルのタンパク収量を測定し、Na-KATPaseの比活性をみた。また、ラット胸部大動脈のリング標本をマグヌス法実験装置に装着し、先に採血した血漿を栄養液の代わりとして用い、同一血管に対しそれぞれの対象者の血漿を反応させ、ノルアドレナリンにより血管収縮の反応性の違いを比較検討した。基礎実験段階の成績では、腎・脳組織に比べ赤血球膜標本のNa-KATPase活性はかなり低い。活性を上げるための方法をいくつか試みているが、ヨウ化ナトリウム処理を加える方法が有効であると判明した。そこで本法を用い、正常妊婦、妊娠中毒症患者、本態性高血圧合併妊婦を対象に目下検討中である。
|