研究概要 |
胞状奇胎が絨毛癌の発生に関与していることは広く認められるところである。癌化の二段階過程の理論から考えると奇胎絨毛細胞は正常絨毛細胞と絨毛癌細胞の中間に位し、潜在的癌細胞たりうる可能性があると考えられる。そこで各種発癌プロモーター(TPA.Teleocidin,Vit D_3)は奇胎由来培養細胞(BMー34)を悪性転換(癌化)させうるかどうかを二重軟寒天中でのコロニー形成能とヌードマウス・ヌードラットへの腫瘍形成能を指標に検討した。今年度の研究では全胞状奇胎嚢胞から得られた培養細胞(BM-34)をTPA(0.1、1.0、10、100ng/ml)添加培養液中で10、12、16、20週間、Teleocidin(TLC)(1.0、10ng/ml)添加培養液中で10、12、16、20週間、vit D_3(0.1、1.0、10ng/ml)添加培養液中で8、10、12週間とそれぞれ培養した。これら各処理細胞の二重軟寒天中でのコロニー形成能とヌードラット、ヌードマウスへの移植を試みた。結果は、TPA、TLCでは12週処理群で全濃度において、有意差をもって、対照に比してコロニー数の増加を認めた。vit D_3に関しては12週の処理群にてコロニーの増加は濃度に逆比例し、あたかもアンチプロモーター作用をほうふつとさせる結果を得た。しかし、20週までの処理細胞の移植では13週以上の観察にもかかわらず腫瘍形成能は得られなかった。 今後の研究では、自然界にある発癌プロモーターとなりうる嫌気性菌から産生されるnー酪酸についても同様の実験を行い、又、移植実験では、ヌードマウスの処理細胞注入部位に長期間発癌プロモーターを作用させて腫瘍形成能を観察する予定である。
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