体外受精(IVF)における排卵誘発周期の卵胞発育、卵の受精分割能、更には着床に関して検討し以下の結果が得られた。 1.各種排卵誘発法(clomiphene-hMG法、hMG法、FSH法)の比較:発育卵胞数、受精率、分割率には、排卵誘発法による差はなかった。 2.血清luteinizing hormone(LH)と卵の受精分割能:卵胞成熟前にLHが高値となると、卵のviabilityが低下し、受精分割能が失われる。 3.卵胞のmicroenvironment:卵胞液estradiol、androstenedione濃度は卵のviabilityを反映する。卵胞及び卵の発育にはasynchronyが存在し、排卵直前の成熟卵胞も閉鎖卵胞へ移行する。卵胞液cAMP濃度は採取後時間の経過とともに急速に低下し、その分解速度すなわちphosphodiesterase活性は卵の分割能と相関する。 4.卵巣過剰刺激が着床に及ぼす影響:高度の卵巣過剰刺激周期では、着床が障害される。 排卵障害の排卵誘発療法においてもIVF周期と同様に、ほとんどの例で複数の卵胞が発育する。しかし最も強力なhMG療法においても、多胎妊娠の頻度は2割程度に過ぎない。これは本研究で明らかとなった上記知見が原因となって、発育卵胞数に比し受精分割卵数及び着床胚数が少なくなっているためと考えられる。排卵誘発療法において発育卵胞数を抑制することが不可能な現時点では、受精分割能を有するviableな卵を減少させることにより、多胎妊娠等の副作用を予防できるものと考えられる。今後卵胞の発育と閉鎖の機序を更に解明することにより、単一排卵のための排卵誘発法を開発することが可能になると思われる。
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