研究概要 |
精子不動化抗体(SI抗体)保有不妊婦人末梢リンパ球とマウスミエローマ株化細胞(NSI)との細胞融合により樹立したSI抗体(IgMλ)産生ヒトーマウスヘテロハイブリドーマ(H6-3C4)からそのゲノムライブラリーを作成し, これよりヒトJH領域遺伝子をプローブとしてH鎖V領域遺伝子断片を単離した. これをヒトミエローマ細胞(ARB77)由来のγ鎖C領域遺伝子と結合させ, μ→γ,ヘクラススイッチした後, 発現型ベクター(pSV2gpt)に組み込み形質転換用プラスミド(pSV2-SIGI)とした. 他方, H6-3C4のcDNAライブラリーよりλ鎖をコードするcDNAを単離し, そのV領域DNA断片をプローブとしてH6-3C4のゲノムライブラリーからλ鎖遺伝子を単離し, これを発現型ベクター(pSV2neo)に組込み形質転換用のプラスミド(pSV2-SIλ-E)とした. 先ず, プロトプラスト融合法にてpSV2-SI-GI(H鎖)をIg非産生マウスミエローマ細胞(x63Ag8,653)に導入し, H鎖形質転換株を得た. 継いでこのH鎖転換株にpSV2-SIλ-E(L鎖)を導入し両鎖を発現する形質転換株を得た. 形質転換細胞株の培養上清をSDS-PAGE電気泳動で分画しヤギ抗ヒトIgG抗体を用いてWestern blottingを行なうと, 非還元条件下で160kdに, 還元条件下で54Kdにバンドが検出され, 培養上清中にヒトIgGが分泌されていることが分かった. また微量精子不動化試験を用いて培養上清中のSI抗体活性を調べたところ, 補体依存性の強い精子不動化作用を示すことが明らかとなった. 以上, 本研究ではヒト型SI抗体を産生するヒトーマウスヘテロハイブリドーマよりヒト抗体遺伝子を単離し, 遺伝子レベルでIgMからIgGにクラススイッチに行なった後, これをマウスミエローマ細胞に導入してIgGクラスのヒト型SI抗体を産生する形質転換株の樹立に成功した. このような方法はヒト型モノクローナル抗体を安定に提供するために有用な手段であると考えられる.
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