研究概要 |
精子不動化抗体 (SI抗体) 保有不妊婦人の抹消血リンパ球とマウスミ エローマ株化細胞 (NSI) の細胞融合により確立したSI抗体 (IgM.λ) 産生 ヒト-マウスヘテロハイブリドーマ (H6-3C4) の安定化を計り、かつ同じ特異 性を持ったIgG抗体を得るために、H6-3C4細胞からH鎖V領域遺伝子とλ鎖 遺伝子を単離し、前者はヒトγ_1鎖C領域遺伝子と結合させ、μ→γ_1ヘク ラススイッチした後、それぞれの遺伝子を発現ベクター (pSV2gpt,pSV2 neo) に組み込み形質転換用プラスミド (pSV_2-SIG_1,pSV_< 2>-SIλ-E) を作製した。両プラスミッドを順次Ig非産生マウスミエローマ 細胞 (X63Ag8-653) に導入し、両鎖を発現する5つの形質転換株 (En4 6A_4,En46H_<12>,En34B_3,En34G_5,En3B 7) を樹立した。共に培養上清中にヒトIgG_1を分泌し、その濃度は0.2〜 0.5μg/mlであった。また定量的精子不動化試験により測定したSI抗体活性 はSI_<50>値で10〜20単位であった。これはH6-3C4培養上清中のSI _<50>値5000単位に比べて低値であったが、H6-3C4上清中のIgM濃度 が1.5〜2.0μg/mlであることと、IgG_1の補体活性化作用がIgM に比較して弱いことを考慮すると、両SI抗体の対応精子抗原に対する親和性はほぼ 同じと考えられる。樹立した形質転換細胞株の1つ (En46A_4) からIgG _1を分離し、その受精阻害作用を透明帯除去ハムスター卵へのヒト精子侵入実験 により調べたが有意な阻害作用は認められなかった。本研究ではヒト型SI抗体を産 生するヒト-マウスヘチロハイブリドーマよりヒト抗体遺伝子を単離し、遺伝子レベ ルでIgMからIgG_1にクラススイッチを行なった後、これをマウスミエロー マ細胞に導入して、ヒト型SI抗体を産生する形質転換株を得ることに成功した。こ のような方法は、ヒト型モノクローナル抗体を安定に供給するための非常に有用な手 段であると考えられる。
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