研究概要 |
本研究の目的は, 情報処理により負荷される視覚系・前庭系の加算刺激に対する眼運動, 眼振, 重心動揺を定性的・定量的に分析するとともに, 深部知覚系刺激の加重による統合制御機構をコンピュータで分析する検査システムを確立することである. 私共は従来, 視運動性ドラム内で, 閉眼・開眼下に振子様回転刺激を与え, 視覚系と前庭迷路系との相互関係を追求する視運動性前庭動眼反射検査(visual vestibulo-ocular reflex test,V-VDR)を臨床検査としてルーチン検査に応用してい. したがって, 今回, この視覚系と前庭系との相互加算機構をみる検査として, 振子様視運動刺激(pendular optck netic stimulation.P-OKN), 振子様回転刺激(VOR)を与えるとともに, 両者を加算するV-VOR刺激を与えることができる検査システムを臨床例に応用し, オンライン実時間処理する検査を確立した. 正常限界も決定し, P-OKN-DP, VOR-DP, V-VOR-DPの判定値も決定し, 末梢疾患のみならず, 小脳脳幹障害の鑑別にも有用であることを国際学会(Barany学会, ボローニア)でも発表した. さらに, 視覚系・前庭系のみならず, 深部知覚系の加算積分機構を追求するために, 振子様視運動回転刺激装置の椅子上で, 頚部捻転負荷が与えられる電動式の頚部振子様運動刺激装置を試作した. この装置はマイコン制御下に左右5-10〜15°の任意の振幅で0.1〜0.5〜1.0Hz周期まで頭部の固定器を運動せしめることができるようにした. 頭頚部の運動は固定器内のセンサーにより出力可能となった. この装置により振子様視運動性回転ドラム内で振子様回転刺激を負荷し, 眼運動(眼振)を計量し, 深部知覚系と前庭系, さらに視運動系の相互関係を追求する検査体系の開発と臨床面への応用が期待される.
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