研究概要 |
耳小骨連鎖異常の鼓膜振動解析と平行して, 中耳モデルを作成し, 乳突洞口断面積を変化させ, それが鼓膜振動にいかに影響するかホログラフィ干渉法を用いて観察・解析した. その結果, 次の結果を得た. 2kHz以下の低音域では, 膜は全体として振動する同心円振動をし, 4kHz以上では分割振動をしていた. 分割振動発生周波数は, 音圧・中耳腔容積・乳突洞口径にはあまり影響されなかった. 乳突洞口閉鎖時以外では, 共振点と反共降点が存在し, その周波数は乳突洞口径により変化した. 中耳腔の膜振動におよぼす効果は, 250Hzでは乳突洞口径にあまり影響されず, 500Hzでは洞口径が閉鎖されると低下するが, 開通していれば狭くてもあまり変化がなく, 1kHzでは洞口径に強く影響されφ2mm程度で最大となり洞口閉鎖時に最小となった. 2〜3kHzでは洞口閉鎖時に効果は大きくなったが, 2kHzにおいては洞口をφ4mmと削開した時最大とななった. 乳突洞口閉鎖時には, 鼓膜の振動周波数特性は1kHz以下では悪化し, 2〜3kHzでは改善した. 又, 洞口を削開したφ4mmの場合と洞口を閉鎖した場合を比較すると, φ4mmの場合2kHzまでの低周波数域で鼓膜の振動周波数特性が改善されていた. 以上の結果は, 昭和62年10月17日第32回オージオロジー学会において発表した. 耳小骨連鎖異常の振動解析に関しては, 現在犬側頭骨を使用した実験中である. 又, 犬側頭骨を使用し中耳腔圧の変化による鼓膜の振動解析も並行して行っている. ホログラフィ光路の改良により, 明瞭な犬側頭骨鼓膜写真が撮れるようになり, 現在解析中であるが, 耳小骨離断により鼓膜振動は増強される傾向がみられている.
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