1.犬側頭骨を用い砧骨と鐙骨間の連鎖の離断および鐙骨と連鎖の固着の状態を作製しHeーNeレーザーを用いたホログラフィ干渉法を用い解析した。正常鼓膜の振動様式については、2KHzまでの周波数では基本的には同じであり、3KHzから先ず槌骨柄後方部から変化し始め、つぎに4KHzからは槌骨柄前方部が変化し始める。すなわち2KHzまでの周波数では槌骨を境にその半分の高さで前後に振幅の頂点をもつ振動がみられ3KHz以上では振幅の頂点が複数の分割振動に変化する。振動振幅については、2KHz以下の周波数では槌骨柄先端部の振幅は槌骨柄前方部の振幅とほぼ等しく、槌骨柄後方部の振幅は槌骨柄先端部の振幅の約3倍である。また槌骨柄と耳小骨の回転軸の成す角度は、犬では約30°である。 2.砧骨と鐙骨間の連鎖の離断:正常と比較すると250Hzから2KHzまでの周波数では振動様式の変化はみられない。3KHz以上では変化する。また鼓膜の振動振幅については2KHz以下では増加3KHz以上では減少が認められた。連鎖を離断すると鼓膜は正常位置より外方へ変位する。この状態では鼓膜のステイフネスが減少し共鳴周波数は低周波数域へと移動したと考えられた。中耳腔容積の増加によっても共鳴周波数は低周波数域へと移動するが、ステイフネスの減少に比べ無視できる。 3.砧骨と鐙骨間の連鎖固着:正常と比較すると振動様式については250Hzから2KHzまでの周波数では同じ傾向であるが3KHz以上では変化し分割数の減少が認められる。鼓膜の振動振幅については5KHz以上で増加4KHz以下では減少する。砧骨と鐙骨間の連鎖と鐙骨を固着すると離断時のような耳小骨連鎖および鼓膜の変位は起こらないが中耳振動系としては弾性のみが増加した状態と考えられる。そのため、共鳴周波数は高周波数域へと移動する。
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