研究概要 |
当教室では, 内耳, 特に前庭器, 半規感の感覚受容細胞の微細構造, およびその病態に関しての研究はすでに多くの実績を残している. しかしながら, これらの神経伝達路に関しては未知の部分が多い. 私はすでにカエルの前庭神経節の微細構造について, 走査電顕による研究を行なってきたが, 本年度はこれに加えて正常モルモット, ラットの前庭神経節の光顕的, 透過電顕的な微細構造の研究を行なった. これらの正常動物を対象とした研究は, 病的状態での前庭神経節の障害性と末梢受容器の障害性の相関を確認するためのものである. また, 以上に加えて, 耳毒性薬剤であるアミノ酸糖体系抗生剤を投与した際の前庭感覚上皮と, 前庭神経節の障害について研究し, その成果をEar Research Japan 18(1987)に発表した. さらに, ある糖の細菌(Mycobacterium fortuitum)が内耳障害を惹起することが言われていたが, この細菌が前庭神経節にどのような影響を及ぼすかについての研究を行なった. この結果, この細菌は末梢前庭感覚細胞のみならず, 前庭神経節も早期から直接障害すること, またこの障害性には細菌の菌体成分が関与していることを明らかにした. この成果については, 耳鼻と臨床(33)1987へ投稿した. なお, 各種の動物(カエル, モルモット, マウス)についての前庭神経節の微細構造, および, 薬剤, 細菌による障害性についてはA-O-D-O法, Fvam法を応用した走査電顕的研究ならびに透過電顕, 光学顕微鏡による研究結果を「前庭神経節の微細立体構造およびその病態」と題して投稿中である.
|