昭和62年度中にはカエル、モルモットの前庭神経節の正常構造を透過電顕、光学顕微鏡的観察したのに加え、走査電顕でその微細構造を立体的に観察してきた。また、これらの基礎的研究による結果をもとに、耳毒性薬物、あるいは細菌の前庭神経節および前庭末梢受容器に及ぼす影響とその病態解明を行ってきた。 今年度は未だ不明である前庭、半規管の各末梢受器から前庭神経節に至る神経走行と分布状態を知るために、HRPを利用した研究を行っている。実験動物にはカエルを用いた。カエルの口蓋部を開放、脳幹部の前庭神経を露出させ、これから分枝する各末梢受容器への神経を切断し(現在は後半規管神経と外側半規管神経の切断に成行している)、その切断部にHRPを注入した。この後2〜3日生存させた後、改めて断頭、前庭神経節を含む前庭神経幹を連続切片として光顕的に観察した。この結果、切断部から前庭神経節に達するHRPの移行が確認されると同時に、後半規管神経を支配する神経細胞の前庭神経節内における存在領域がある程度確認された。今後は全ての半規管、および平衡斑の神経についても同様の実験を行うことによって、前庭神経節内における各末梢受容器支配細胞のマッピングが可能である。一方、受容器間連絡線維に関しては現段階の光顕的観察では確認されていないが、今後透過電顕による詳細な研究を重ねることによってその発見が期待される。
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