研究概要 |
基礎的研究としては新しい多剤併用療法を開発するため, 当科で継代しているヌードマウス可移植性ヒト頭頚部扁平上皮癌Sq-I, Sq-M, Sq-Sの3株を用いて実験を行った. 実験動物としては6週齢雄性BALB/c-nu/nuマウスを用いた. 薬剤はcisplatin(CDDP)8mg/kg, carboplatin(CBOCA)100mg/kg, peplomycin(PEP)16mg/kgを用い, 各々腹腔内投与とした. 薬剤の投与は実際の臨床に則してCDDPあるいはCBDCAは単回投与とし, その翌日より5日間連日でPEPを投与した. 以上により従来, 頭頚部扁平上皮癌に対して68%という奏効率を示しているCDDP, PEPに対して, CBDCA, PEPの併用がどの程度の効果が得られるかを比較検討した. その結果, 両併用療法は3つの腫瘍株に対してほぼ同等の抗腫瘍効果を示した. また副作用においても両群の間に有意差はみられなかった. 以上のことから実際の臨床においてはCDDPの腎毒性を防止するためには入院の上, hydrationを行うことが必須であるのに対し, CBDCAではhydrationが不要であり, 副作用としての悪心・嘔吐が少ないというphase II studyの結果と併せ考えるとCBDCAとPEPの併用療法は外来投与が可能であるのみならず, CDDP+PEPと同等の効果が得られることを示唆している. 従ってCBDCAとPEPの併用療法はquality of lifeという点から考えても有用な治療法として期待される. 臨床的研究としては過去10年間に当科において化学療法単独治療を行った頭頚部進行・再発癌87例についての延命効果を検討した. その結果, 1年以上2年未満の延命効果は16例にみられ, 2年以上3年未満は5例, 3年以上4年未満は4例, 6年以上は2例という成績であった. 従って, 頭頚部進行・再発癌に対する化学療法単独5年生存率は約2%ということになるが, これは10年前にはみられなかったことであり, quality of lifeという面から考えても化学療法の意義はきわめて大きいと考える.
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