研究概要 |
下咽頭癌7検体について, その摘出標本をカルノア固定, パラフィン包埋, 4μ厚切片とし, 連続する切片についてHE染色およびDNA染色を施し, それらを比較対照させた検討した. DNA染色は, Azocarmin-Gで前処理した後, Acriflavin-Feulgen染色を施し, 日本光学落射蛍光顕微測光装置を用い励起光435nm波長を用いたPhotocytometryによって計測した. 切片では細胞核も薄切されるため, 計測絶対値は核全体のDNA量を表わさないから, 半径を計測して球体補正を行うことで解決した. HE染色標本と対比することによって, 癌胞巣についてその周辺と中心部の比較, 高度の角化を示す部位, 角比を伴わないもの, 早期症例については粘膜上皮について基底部から表層角化層までの各層の構成細胞について計測した. 〔結果〕 1.癌胞巣において, その周辺部腫瘍細胞の核DNAは中心部細胞のそれに比較して高値を示した. 2.角化した部分の細胞核DNAは, 角化を伴わない部分の細胞のそれに比較して低値を示した. 3.視野を直線的に一側から他側へ向って計測した場合の各細胞のDNA値をプロットすることにより, 平均値が大きく偏差値も大きいものが低分化癌に多かったのに対して, 高分化癌では胞巣形状にあわせた曲線かえられ, これをDNA-gramと名付けることとした. 4.粘膜上皮の計測においてもDNA-gramが診断上有効であった. 5.下咽頭癌細胞核DNA量の計測は, 腫瘍学的活性度の判定に有効であるものと結論した.
|