発声に関する従来の研究は、ストロボスコピーやハイスピード映画による声帯振動状態の観察、筋電図による筋活動のパターン、発声機能検査装置を用いた声の能力や空気力学的検査が別々に行われてきた。これらの三種類の研究方法が同時に観察記録できれば、より多くの情報が得られ、正常発声のメカニズムを多元的に分析でき、また各疾患の診断、治療法の決定、治療効果の判定にも役立つと考えられる。 そこでまず2つの検査法を組合せることから始めた。具体的にはファイバーストロボスコピーと発声機能検査を同時記録することから始めた。その記録装置の概要は次のごとくである。オリンパス製ファイバースコープを日立製三管ビデオカメラに接続し、B&K製ストロボスコープを用いてVTRシステムに画像を送る。一方発声機能検査装置(PSー77)によって得られたFO、Sound pressure level、Mean airflow rateの値を、0.5sec毎にデジタルパラメータに表示させ、その数値を小型カメラで撮影し、ビデオカメラワイパー装置に一旦送る。そしてファイバーストロボスコピーのテレビ画像内に同時に表示する。以上の装置を用いて正常例および病的例について行い観察した。 次に前述の三種類の検査法を同時に記録するには、もう一台のビデオカメラ装置一式のタイムベースコレクターを用いて、同じように筋電図の画像とファイバーストロボスコピーのテレビ画像内に表示すればよい。しかしその装置を買う研究費がなかったために実現しなかった。 この研究を通して、ストロボスコピーと筋電図と空気力学的検査を同時記録する方法のメドが立ったことは画期的なことであり、この方面の今後の研究に多大な業績を残すことができた。
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