研究概要 |
〔目的〕中枢神経系の発達障害を検索する場合, 機能的障害の評価が重要であり, 形態から機能へのアプローチとしては, シナプスの形成障害の検索が重要な課題である. 本研究では, ラット大脳視覚領におけるニューロン密度, シナプス密度, シナプス・ニューロン比等をしらべ, 低栄養とその他の環境要因のシナプス形成に対する影響を定量的に評価することを目的とする. 本年度は, 環境要因として生下時から連続暗環境飼育を行い, 視覚系発達に対する影響を観察した. 〔方法〕ラットを出生時より連続暗環境で30日間飼育し, 半数のラットを灌流固定した. 残りの半数のラットは生後30日以後通常の明暗環境(12時間明・12時間暗)にもどして飼育し, 生後65日で剖検, 灌流固定を行った. 対照としては, 常時明暗環境で飼育したラットを生後30日又は65日で剖検して灌流固定を行った. 切り出した試料を再固定後, 脱水, エポン包埋し, 四丘体上丘について光顕標本および電顕標本を作製した. 1.ニューロン密度:厚さ3μmの切片にトルイジンブルー染色を施し, 光学顕微鏡にてニューロンの数を算定し, 単位体積当りの細胞密度をもとめた. 2.シナプス密度:厚さ60nmの超薄切片にウラン・鉛二重染色を施し, 電顕写真を撮影した. 最終倍率を約3万倍としてプリントした写真上でシナプス数を算定し, 単位体積当りのシナプス密度をもとめた. 3.シナプス・ニューロン比:1, 2でもとめた値より算出した. 〔結果と考察〕各観察項目とも, 30日間の連続暗環境飼育直後の計測では対照との差はみられなかった. 生後65日の計測では, 生後30日まで連続暗環境飼育した群でニューロン密度が減少し, シナプス密度が増加し, それに伴ってシナプス・ニューロン比が上昇する傾向がみられたが, 統計学的に有意ではなかった.
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