研究概要 |
サル眼の後極部網膜に強い光凝固を行い網膜下新生血管を発生させた. 光凝固後, 2または3日で, 光凝固部周囲にみられる既存の脈絡膜細静脈, または光凝固部の血栓形成後の再疎通をきたした脈絡膜血管の内皮細胞に発芽がみられ, 数個の発芽した内皮細胞は管腔を形成しながら, 網膜側へ伸びていった. この発芽の先進部付近には多数のマクロファージがみられ, また先進部より少し近位側の内皮細胞には核分裂像が認められた. 新生血管の内皮細胞は発芽と核分裂をしながら, どんどん進展し, 約1週間で網膜下へ到達した. 発育先進部の内皮細胞には基底膜がなく, 胞体は厚く, その胞体内には多数のリボゾームがみられ, 活発な活動をしていることが推測された. また先進部の未熟な内皮細胞には, 窓形成はまだ認められないが, 先進部より少し離れた新生血管の内皮細胞は次第に成熟していき, 脈絡膜血管と同じように窓形成がみられるようになった. 発育先進部付近の内皮細胞の細胞間には常に細胞間接合装置が認められるが, 未熟で離開しやすく, その部を通って血漿成分や赤血球の血管外漏出がみられた. この新生血管先進部の未熟性による血液成分の血管外漏出が, 臨床的にみられる限局性の網膜剥離, 硬性白斑, 網膜色素上皮下あるいは網膜下出血などの原因と考えられた.
|