本年度は実験的に網膜下新生血管を作製し、その退縮の機序を組織学的に検討した。 サル眼を用い、強い光凝固を眼底後極部に行い、新生血管を発生させた。経時的に蛍光眼底造影を行い、蛍光色素の漏出と貯留が著明なもの(leaky lesion)と、以前は蛍光色素の漏出と貯留が認められたが、現在はみられないもの(involuted lesion)を組織学的に比較検討した。 Leaky lesionでは脈絡膜血管から発生した網膜下新生血管は網膜下腔に達し、その内皮細胞には窓構造が認められた。新生血管周囲にはフィブリンや血漿成分を満たした空隙がみられた。また網膜色素上皮細胞、グリア細胞などの増殖もみられた。Involuted lesionはleaky lesionと比較して新生血管自体には変化はなく、内皮細胞に窓構造も認められた。しかし新生血管周囲の空隙は消失し、網膜色素上皮細胞、グリア細胞、線維芽細胞、膠原線維などにより埋められていた。 従って、実験的網膜下新生血管の退縮には網膜色素上皮細胞の増殖などの血管周囲の変化が重要であると考えられた。
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