1.網膜下新生血管の発生機序 サル眼に強い光凝固を行い、網膜下新生血管を発生させた。光凝固2日後には脈絡膜血管の内皮細胞は発芽を示し、3日後には内皮細胞は網膜下に伸びていた。また内皮細胞には核分裂像を示すものもみられた。1週間後には網膜下新生血管が内腔を形成し、脈絡膜から網膜下に伸びていた。この実験モデルでは新生血管の周囲にマクロファ-ジを主体とした炎症細胞が多数みられ、これらの細胞と新生血管発生の関連が示唆された(Invest Ophthalmol Vis Sci 28:1116-1130、1987). 2.網膜下新生血管を有する人眼の病理組織学的検討 網膜下新生血管は老人性円盤状黄斑変性症の原因として重要である。本症の摘出眼球を病理組織学的に検討すると、網膜色素上皮下や網膜下に脈絡膜起源の網膜下新生血管を含んだ結合織の増生がみられた。また多量の網膜下出血もみられた。 3.網膜下新生血管の発生進展における抑制因子の検討 サルの実験モデルを用いて、高濃度のステロイドの新生血管に対する影響を検討した。臨床的に蛍光眼底造影で検討すると、新生血管の発生はステロイドで抑制できたが、いったん発生した新生血管を退縮させることはできなかった。現在、この実験の病理組織学的所見を検討中である。 また網膜色素上皮細胞の網膜下新生血管に対する影響を検討した。色素上皮細胞は新生血管の退縮に関係していると考えられたが、グリア細胞など、他の細胞の影響も否定できなかった。 4.眼病理学書[網脈絡膜疾患の臨床病理]の分担執筆 今回の研究成果を利用し、眼病理学書[網脈絡膜疾患の臨床病理]を分担執筆し、出版した。
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