昭和62年度のin vitroの研究では、培養された破骨細胞は、EGFやPGE_2などの作用によって、その吸収能力の増大や細胞の増殖などは認められなかった。すなわち、破骨細胞はin vitroではEGFやPGE_2などの影響を受けることはないとの結論に達した。昭和63年度のin vivoの研究では、EGF、PGE_2そしてwaldo法から誘導された破骨細胞に対して、その吸収能力を見るために、トレーサーのMPの使用(実験1)と、破骨細胞同定のためのTRAP染色(2)などを実施した。EGFまたはPGE_2は、破骨細胞だけでなく、破骨細胞に形態学的に酷似している破歯細胞をも誘導した。すなわち、EGFおよびPGE_2は、in vivoでは骨吸収および歯根吸収の起因物質であるらしい。刷子縁をもつ破骨細胞はMPを取り込むが、刷子縁のない単核の細胞などがMPを取り込まないことから、刷子縁が吸収のための必須細胞内小器官であると考えられる。さらに、MPはclear zoneを通過して吸収面に到達していることから、clear zoneには外界から吸収面を隔離する機能はないものと判断される。次ぎに、collagen fibrils(CF)は刷子縁のチャンネル内には局在したが、細胞内の空胞には存在せず、そのかわり、CFの消化されたものと思われるフィラメント様構造物が観察されたことから、CFはチャンネルから空胞内において消化されることが示唆される。TRAPは破骨および破歯細胞だけでなく、それらの一連の細胞(単核の前破骨および破歯細胞、そして刷子縁のない多核細胞)にも同定できたが、単球ーマクロファージには同定できなかったことから、破骨細胞と破歯細胞は全く同一の細胞である反面、TRAP陰性のため、単球ーマクロファージは破骨(破歯)細胞の前駆細胞ではないかもしれない。
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