研究概要 |
細胞性骨吸収の主役を演じている破骨細胞の微細構造について電子顕微鏡レベルでの検索を行った. 可能な限り生体にある状態に近い状態で構造を保存するために, 従来よりの化学固定を含む通常試料作製法に加え, 液体チッ素温度での急速凍結固定後, 凍結置換法併用による切片像間接を行った. 急速凍結法としては液体チッ素で冷却した金属面に新鮮試料を圧接することで物理的な凍結固定とした. しかし氷晶防止剤を用いずに電子顕微鏡下で氷晶形成による細胞, 組織の破壊が少ない良好な凍結状態を示す試料を得ることは非常に困難であった. それらの原因としては, 今回の検索対象とする破骨細胞を含む試料が石灰化骨組織を有するため凍結時の試料と圧接金属面との接触が均一に行われる可能性が少ないことと, 熱の伝導が石灰化組織と非石灰化組織とでは異なるため均一な凍結速度をえることが期待できないことにあると考えられる. このように再現性に問題がある急速凍結・凍結置換法であるが良好な凍結状態にある切片像からは従来法のそれから引き出せなかった重要な情報を得ることができた. 特に破骨細胞の骨面の分化形態についていくかつの新知見を明らかにすることができた. Ruffled border内にはmicrafilamentの網状構造が明らかになるとともに膜内面の裏打ち構造を観察することができた. 一方, clear zoneではmicrofilamentの他にintermediate filamentの混在も明らかにすることができ, それらの細胞骨格はclear zone膜の補強にかかわっていると考えられる. Ruffled borderの外面にはsurface coatが, clear zoneと骨面との間にはcementing materialが証明され, それらのいずれもが破骨細胞の機能と重要なかかわりを持つものと推察される. 今後は方法の再現性の向上を計るとともに, より詳細な破骨細胞の形態解析を行う予定である.
|