研究概要 |
細胞膜の分化形態を超微構造としてとらえるためには、凍結レプリカ法が有効な手法である。破折面が膜内を通過した時、膜内粒子として観察される膜タンパクの形状、数、大きさ、分布様式がその細胞の機能と連動していると考えてよい。破骨細胞の機能を考える上でもこの種の知見は欠かせないものである。一つの細胞の中でRuffled border,clear zoneなどの多様な膜分化様式をそなえた破骨細胞についての膜面に関するフリーズレプリカ法による報告は今までない。我々はニワトリin vivo破骨細胞についてフリーズ・レプリカ法により検索を行い、以下の知見を得ることができた。Ruffled border膜には形状の異なったものが2種、大きさの異ったものが3種区別することができ、粒子の密度、分布様式からも他の膜と区別することができた。骨面に付着した破骨細胞と遊離したもののRuffled border膜を比較すると、前者は後者より常に高い膜内粒子密度を有していた。それら膜内粒子は破骨細胞の骨吸収機能と密接な関連性がうかがわれた。Ruffled borderとClear zone膜の移行部の観察所見は両者の共通性を否定したものであった。Ruffled border膜にはtrans membranousな膜内粒子も観察され、特殊化した膜内粒子が、proton-pump ATPase,sodiumpump ATPaseといかなる関係を持つのか今後解明すべき点も明らかにされた。これら得られた所見については目下発表準備中で解剖学関係の海外誌に投稿準備中である。本年度の研究の一環としての細胞化学的手法を用いての検索では破骨細胞の酒石酸耐性酸性フォスファターゼ活性の局在を電子顕微鏡レベルで証明した。それらの詳細はCell & Tissue Research vol. 255,PP 69-76(1989)に掲載済みである。本酵素活性は前破骨細胞の段階で検出することができ、破骨細胞の同定をより容易にした。また、細胞内のみならず吸収骨面上にも活性が認められることは、本酵素の骨のリモデリングに関与する可能性を示唆したといえる。
|