骨に関する疾患が社会的な問題になりつつある今日、骨の解剖、生理、病理の解明が求められている。骨吸収の主役を演じている細胞成分は、多核、巨細胞である破骨細胞であるが、この細胞は複雑にからみあった液性、細胞性因子により細胞機能の調節をうけていることが明らかにされつつあるが、破骨細胞のin vivo微細構造上解明すべき問題点は少なくない。そこで我々は正確なin vivo 破骨細胞の構造解析を現在用いられている手法のうち、最も"生の状態"に近い細胞像を捕えることのできると考えられている急速凍結固定を用いて行うと共に細胞化学的手法を用いて細胞の機能的側面も考察した。 金属接触法による凍結固定の最大の利点は破骨細胞のような試料作製操作に弱く、運動性を有する巨細胞を瞬時のうちに固定することができることである。凍結置換法を併用した切片観察から、今まで報告されていないような知見を明らかにすることができた。その結果は第30回歯科基礎医学会で発表するとともにAnatomical Record vol.244(1988)に掲載された。破骨細胞の機能発現にかかれる細胞構造の特徴を明らかにすることができた。切片像の解析のみならず、凍結レプリカ法を応用した検索例においても多くの興味ある知見を得た。それらの成果については、1989年度中に学会および論文発表の予定である。その成果の一部は、レプリカに表われる膜内粒子の形、分布、密度とも破骨細胞の各種面で異っていた。骨面に付着したものと遊離したものとの間にも大きな相違が認められた。破骨細胞の膜内粒子はその細胞活動と密接な関係があることが判明した。細胞化学会手法により破骨細胞の機能を考察した研究はCell & Tissue Research vol.255(1989)に掲載された。破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸耐性酸性フォスファターゼ活性を電子顕微鏡レベルで証明し、その特異な細胞内局在性を示すとともに吸収骨面上の活性検出は細胞外での同酵素の機能を示唆した。
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