研究概要 |
研究方法:スプラグードゥリー系雄ラットの左側上顎第1および第2臼歯の歯間に矯正用ゴムを挿入することによって, 歯周炎を惹起させ, 1週間後にゴムを除去し, ポケット上皮の形態的および機能的特徴について, 光学顕微鏡, 酵素抗体法ならびに電子顕微鏡を用いて, 経時的に検索した. 研究成績:1.実験的歯周炎の程度を, 高庶糖飼料と普通固形飼料で飼育した動物を比較すると, 前者では歯周炎の程度と範囲が後者より顕著であり, また炎症が長期間(約9週間)にわたって持続していた. 2.酵素抗体法による観察では, (1)ポリクロナール・ケラチンに対しては, ポケット上皮も付着上皮と同様に陽性反応を示した. (2)モノクロナール・ケラチンに対しては口腔上皮と歯内溝上皮の棘細胞および顆粒細胞のみが陽性を示し, 正常付着上皮もポケット上皮も陰性であった. (3)ラミニンに対しては, 対照群では内側および外側基底板そして血管周囲に一致して陽性反応がみられた. 実験群ではポケット上皮の表層に陽性反応はみられなかったが, 長い付着上皮様の細胞ではセメント質側に不連続ながら陽性反応がみとめられた. 3.電子顕微鏡による観察では, ポケット上皮細胞は核の細胞質に占める割合が大で小器官の発達は一般に悪く, いわゆる未分化な細胞の特徴を備えていた. しかし, 細胞質内には中間大フィラメントが比較的良く発達しており, 角化上皮への分化傾向がうかがわれた. これらの細胞は細胞間隙が著しく拡大しており, 透過性関門機構が存在する可能性はほとんどないと考えられた. また長い付着上皮様細胞は断続的に歯根セメント質表面と半接着斑によって結合していたが, 細胞同志の接着斑はその数が少なく, 結合は弱いことが示唆された.
|