1.象牙質形成障害 (1) ビンブラスチン投与:投与36時間後、予成象牙質中に長さ約320nm、幅約200nmで左右対称性の多数のバンド構造を持つ分節状コラーゲンが認められる。この異常コラーゲンは経時的に移動し、象牙質に埋入される。またこれの見られる範囲はきわめて狭く、象牙質が一層形成された部分に見られるが、他の部分ではみられない。この部の象牙質形成量および石灰化度は、薬物投与前後であまり差が認められないが、それ以外の部分ではきわめて構造不規則で、石灰化度の低い象牙質が形成されている。 (2) フッ化ナトリウム投与:細胞遠心端に接する予成象牙質には、投与1時間後より多量の無定形物質が出現し、そこにはルテニウムレッド陽性物質 (酸性ムコ多糖体) が多量に含まれており、上記と同様の分節状コラーゲンも出現する。投与6時間後には、約160nmの周期構造を持つ長周期コラーゲン線維も出現する。これらの異常コラーゲンは、石灰化前線に達すると結晶の沈着を受け石灰化する。脱灰切片で観察すると、異常コラーゲンには細い線維状の構造が見られ、コラーゲン分子の結合が弛緩しているように見える。また象牙質には高石灰化層と低石灰化層の出現が観察される。 2.琺瑯質形成障害 (1) ビンブラスチン投与:投与24時間以後、形成期琺瑯質表層に形成される結晶は、正常のものと比べ細く、琺瑯質の石灰化度も低い。成熟期琺瑯質では、投与5日後で琺瑯質表面が不規則となり、ここに多量の有機性基質と中電子密度拘質および細胞片の埋入が観察される。 (2) フッ化ナトリウム投与:投与24時間以後、琺瑯小柱の構造が不明瞭で、結晶も細い異常な琺瑯質が形成される。
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