本研究では、MRL/MPーlpr/lpr(MRL/l)マウスを生後6週、8週、12週、20週および24週以上で加齢的に屠殺し、顎下腺、舌下腺、舌、顎下リンパ節、肺、賢、脾、その他に自然発症する臓器病変を免疫組織化学的に検索した。一部のMRL/lマウスでは、血清中に出現する自己抗体を検索した。抗マウスモノクローナル抗体(BECTON DICKINSON社製)を用いて、Lyt表現型の違いによる末梢Tcell subsetの検索(酵素抗体ABC法)を主体に行った。immune complexやC_3 fragmentの証明には蛍光抗体直接法を用いた。血清中の抗核抗体はHEpー2細胞(AFT systemIII)を用いて蛍光抗体間接法で検出した。可溶性核抗原の検出には、Ouchterlony assayを用いた。さらに、種々の免疫異常や病変発現の根本的原因であるリンパ球の増殖能を明らかにする目的で、顕微蛍光測光法による核DNA量の測定を行った。同時に、末梢血液像とhemogramの変化を加齢的に検索した。その結果、MRL/lマウスの口腔領域に発現する組織障害は、lpr geneによって規定されたgeneticalなヘルパーTリンパ球(Thyー1、2^+、Lytー1^+)の増殖を原因とするimmune complex diseaseの一分症であることが明らかとなった。顎下腺に発現する肉芽腫性血管炎の原因については、初期に実質内に出現するリンパ球(Lytー1^+)のfocalな浸潤によって惹起されるpolyclnal B cell activationや全身的な自己抗体の産生が原因となって生ずるimmune complexの沈着が大きな役割を果たすことが明らかとなった。一方、舌に発現する肉芽腫性血管炎ではimmune complexの沈着とマクロファージの機能異常(貪食能の亢進と消化不全)が大きな原因となることが明らかとなった。核DNA量の測定では、顎下リンパ節や顎下腺炎症細胞浸潤巣に増殖したリンパ球共に、染色体数の異常など明らかなmalignant neoplasmとしての性格は示唆されなかった。末梢血中のリンパ球数は加齢的に増加が認められた。
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