研究概要 |
本研究では, 明らかに若年期に発症したと考えられる16〜27歳までの重度歯周炎患者14例を対象に, 末梢血リンパ球サブセットの変動及び血清免疫グロブリンの定量を行い, 既に報告した成人性歯周炎患者データとの差異を検討した. また同時に, 同年代健常人の末梢血リンパ球サブセットの経時的変動についても検索を行い比較対照とした. この結果, 患者リンパ球においてOKT-3陽性細胞は59.48±11.04%(74.50±9.85%), OKT-4陽性細胞は35.05±8.49%(45.65±6.00%)で健常人と比較して1%の危険率で低下を認めた. 逆にLeu-16陽性細胞は19.13±6.97%(6.07±2.31%)で1%の危険率で増加を認めた. しかしながらOKT-4/OKT-8比は1.47±0.54(1.55±0.39)で有意差は認められなかった. なお, ( )内は健常人データを示す. 同時に行った血清免疫グロブリンの定量結果ではIgG,IgM,IgAともに正常範囲内ではあるが増加を示し, IgGでは1%の危険率で有意差を認めた. さらに3例に関しては治療途上の約6ヶ月後に再度検索を行った. この結果, 臨床症状の改善に伴い高値であったB-cell陽性率の低下とT-cell陽性率の上昇, ならびに免疫グロブリン量の低下が見られた. 以上のことから若年者に発現する重度歯周炎において, T-cell陽性率の総体的な低下とB-cell陽性率の上昇, ならびにこれに呼応して免疫グロブリン量の増加することが明らかとなり, さらにこれら値は症状の改善に伴い健常人値に近づくことが窺われた. 本検索におけるこれら結果は, 先に報告した成人性歯周炎の傾向とはやや異なるものであり, 早期発症と速やかな病機の進行を特徴とする若年性歯周炎では, 成人性歯周炎とは異なった形での免疫機構の関与が存在することが示唆された.
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