研究概要 |
骨の石灰化過程に種々の非コラーゲン性蛋白が重要な役割を果していると考えられているが, その詳細な機構については不明な点が多い. 今年度の研究では, 牛骨よりオステオネクティン, Gca蛋白, リン蛋白を抽出し, これら蛋白の非晶質リン酸カルシウム(ACP)の析出過程及びACPからアパタイトへの転換過程におよぼす効果を調べた. その結果, ACPは画蛋白濃度が高くなると安定化され, アパタイトに移行するのが遅延された. 遅延効果は, オステオネクティン, Gla蛋白, リン蛋白の順に大きかった. カルシウム電極を用い, 石灰化溶液の遊離カルシウム濃度を測定すると, 各蛋白の導入前後において差違が認められないこと, ならびにリン酸カルシウム塩析出反応時のカルシウム濃度の経時変化が, 糸を中性に保つために消費されるKOH溶液量の経時変化に極めて類似していたことから, 上述の遅延効果は, 各蛋白の存在により遊離カルシウム量が減少したために発現したとき考えられないことが明らかとなった. 各蛋白存在下に析出した固相を電顕観察すると, 球状のACPの大きさは蛋白存在下では小さくなる傾向を示したが, アパタイトへの転換直前ではコントロールの場合と本質的に同じであった. 更に興味ある点は転換過程でACP表面上に析出するリン酸8カルシウム(OCP)の結晶が, 蛋白存在下で細長くしかも数多く生成する傾向を示したことである. この傾向は遅延効果の大きい蛋白ほど顕著であり, 遅延効果は転換過程で析出するOCPの横方向への成長を阻害するためと考えられた. OCPの横方向への成長が阻害されれば, OCPから生成するアパタイトも比較的短い針状を呈することも電顕観察により示された. 以上, 各蛋白は前駆体の析出様相を変化させ得る能力を有し, 最終安定相のアパタイトの形状を積極的に調整し得ることが示された. 次年度では, 種結晶を用いた結晶成長計において各蛋白の効果を比較検討する.
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