研究概要 |
マス、Oncorhynchus masou(Brevoort)の咬筋を取り出し、ホルマリン、ブアン等の固定を行った後、パラフィン包埋し、10μmの切片として、一部はヘマトキシリンやアザン染色を行ない、大部分は各種の鍍銀を行なって筋紡錘を追求した。 魚類は魚体部においては、もち論、咀しゃく筋においても閉口筋では殆んど筋紡錘を認めることができなかった。ところが閉口筋である咬筋の表層部に長さ、約2000μm、短径30μmの筋紡錘が認められた。一側の咬筋の内で1個か2個程度認められるにすぎない。このように分布が少ないので、電子顕微鏡所見においては未だその超微構造像は得られていない。 H・E染色やAzan染色の横断切片では、筋紡錘は外膜線維からなる被膜でおおわれていて、他の筋線維群とは明らかに区別できる。つまり他の紡錘外線維extrafusal fiberはエオジンやAzanで染色されているが被膜内は大部分が無色透明で、その中には紡錘内線維intrafusal fiberや線維細胞が認められる。長軸方向の切片を鍍銀染色すると、紡錘内線維の中央において、primary afferent nerve fiberが径2.5μmていどのラセンを描いて(20回位)いる像が観察できた。 海産魚類のタイやハマチ等は魚類の中では最も高等に属する。現在まで筋紡錘を持つ最下等の動物とされている両棲類とヤマメやマスとの中間にあると考えられるが、咬筋が大きいためか未だに、その像が得られていないが必ず見出されるものと考えているので、今年度も引き続き研索する。その結果は1990年3月に開催される、第68回International Association for Dental Research at Cincinnati,Ohio,USAで発表するように準備中である。
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