研究概要 |
近年, 哺乳類のCa調節機構に対し下垂体ホルモンのプロラクチン(LTH)の関与が示唆されたが, その多くは未解決である. LTHが骨細胞のCa取込み促進・血清Ca値上昇・骨細胞の形能変化を起すことが申請者により見出され, 他のホルモン(PTH・活性型V-D3)同様, Ca調節へのLTHの役割が強められた. 当研究は破骨細胞に対するLTHの作用について形態と機能の両面より光顕及び電顕的観察を行い次の結果を得, LTHのCa調節機構への役割を提起した. 材料:骨及び破骨細胞はラット及びマウス新生児の頭頂骨又は長幹骨から採取し, 通法に従いα-MEM中で144h培養してその間LTHを添加し観察した. 結果:ラット・マウス各々の細胞に対し, LTHの効果は同傾向を示した. 1.多核細胞の出現:破骨細胞は, 対照群では経時的に数が減少したが, 一方LTH(200Mg/ml)添加群では破骨細胞若しくは破骨細胞類似性の多核巨大細胞の出現が著明に増加した. それらは, 対照群では認め難い培養96h以後でも多く認められた. 更に, 破骨細胞の核の形態に類似した単核或は二核を有する小型細胞が顕著に出現し, それらは骨細胞層に囲まれた空間内に互に近接して認められた. 2.破骨細胞のマーカー酵素酒石酸抵抗性酸フォスファターゼが検出:LTH添加群で増加出現した多核並びに単核細胞には破骨細胞のマーカ酵素が検出. 3.硬組織吸収能の有無:クジラの象牙室切片上で細胞培養を行い吸収能を光顕及び走査型電顕で調べた. 吸収窩は, 対照群では48〜72hに大型のが認められたが以後減少し, 一方LTH添加群ではその数は経時的に増加し96h以後も著明に認められた. 又, 吸収窩は対照群と比較し添加群では小型化した. 63年度は, 吸収窩に隣接し存在する吸収能を有すると推定される細胞の形態について透過型電顕を用い検索する.
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