研究概要 |
咀嚼運動の中枢機序を知る上で重要な歯根膜機械受容の大脳皮質体性感覚野レベルでの情報処理機構についてすでに知られている末梢での結果と比較しながらネコを用いて電気生理学的に明らかにした. 今年度は, 大脳皮質に投射する前の情報処理の場である視床について集中的に調べ, 次年度における大脳皮質体性感覚野での応答の性質を調べるための準備とした. その結果, 1)視床での歯根膜機械受容ニュートロンは, 視床VPM核の内腹側に局在すること, 2)全ニュートロン(354個)中, 遅順応性ユニットが全体の44%(155個)残っていた. 3)体幹の体性感覚情報と異なり同側支配および両側支配のニュートロンが少なからず存在していた. それぞれ全体の25%, 23%であった. 4)末梢でのユニットの受容野は, ほとんどが一歯支配のみであった(95%)が, 視床ニュートロンでは1歯のみのものは少なく(13%), ほとんどが多歯支配であった. 5)全歯を同側上顎, 同側下顎, 対側上顎, 対側下顎に4分割して受容野の広がり方を調べてみると4分割中, 1分割にのみ限局するもの, 2分割, 3分割, 4分割に広がるものはそれぞれ53%, 36%, 10%, 16%であった. これらのユニットは, 収束が進むものほど(受容野が広いものほど)視床VPL中の歯根膜応答領域の尾側部に移っていた. 即ち, 1分割の収束の少いものは吻側部に集中し, 収束の最も強い4分割ニュートロンは最尾〓〓局〓在していた. 6)収束のやり方は, 決してランダムではなく, 法則性のあるものであった. 即ち, 2分割のニュートロンでいえば咀嚼に必要な上下顎の咬み合わせになる対のものが最も多く, 咀嚼運動に意味をもたない上下顎対側どうしの組み合わせは全く存在しなかった. 7)これらの結果から視床レベルでの情報処理がかなり行われているが, 遅順応性ユニットの大脳皮質での存在の可能性はかなり高いものと考えられた.
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