研究概要 |
連続培養装置を用いて酸性環境におけるStreptococcus mutansJC2株の増殖と酸産生力を高度嫌気条件と好気条件で比較した. 1.S.mutansJC2株は高度嫌気条件でグルコース制限条件でも酸性環境で増殖するときは主として乳酸を産生した. 2.好気条件でよりも高度嫌気条件でのほうがこの菌の酸性環境での増殖力, 酸産生力, すなわち耐酸性が強いこと, また高度嫌気条件でのほうが消費グルコースあたりの菌の増殖および消費グルコースあたり産生される酸の量も多い. 3.さらに, 種々のpHで増殖後緩衝液で洗った休止菌に高濃度のグルコースを加えてインキュベートしたときの酸産生力を好気条件と高度嫌気条件で比べてみると, どのpHで増殖した菌も酸性の反応液中では好気条件でよりも高度嫌気条件でのほうが酸産生の初期速度, 菌あたりの産生酸量ともに高いことが明らかとなった. 4.以上の結果からS.mutansの酸性環境での増殖力および酸産生力は好気的な菌垢表層でよりも, 嫌気度の高い歯垢深層でのほうがより強いこと, またこのような高度に嫌気的で酸性の環境でこの菌が増殖するときは糖代謝によって主として乳酸を産生することが考えられる. さらにこの菌の他の株, S.sanguis, S.mitis, S.salivariusの株についても調べ比較, 検討する.
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