研究概要 |
本年度の研究計画の一つであるウサギ洗浄血小板を用いたPAFの微量定量法の確立はほぼ達成され, 5pgの検出限界で再現性よく定量することが可能になった. 又組織からの粗抽出物についても, アラキゲン酸, ADPによる凝集の抑制剤を用いることにより定量が出来る. この方法を用いてラット歯髄組織におけるPAF生成を検討した. 非刺激の組織からは全くPAF活性が検出されなかったが, 5μMA23187刺激によりPAF活性が検出された. しかしその量は非常に微量であり, 現在その促進剤(PMSFなど)を検討している. PAFは生体内においては, 組織性あるいは血しょう性のアセチルハイドロラーゼにより速やかに分解される. そこで〔^3H〕PAFを用いて歯髄での代謝を検討した所, 30分の処理で約70%が分解され, lyso PAFは速やかに代謝不活性化されると思われる. 一方, 歯髄組織でPAFが生理作用をもつかを検討した所, PAF, 又はacyl GPCに代謝されることがわかった. 従って歯髄で生成されるPAFは歯髄PGI_2及びTXA_2生合成を促進することがわかった. その作用様式はPGI_2, TXA_2で異っており, PAFは異なる細胞に作用してそれを活性化しているものと考えられる. またPAFのPGI_2生成に対する作用は外液Caに依存しているのに対し, TXA_2生成に対する作用は外液Caを必要としなかった. このことはPAFの作用機序が異なることを示唆しておりさらに検討が必要である. PAFの促進作用は, 特異的なPAF拮抗薬CV3988, BN52021等により用量依存的に抑制され, 特異的なPAF受容体が考えられる. 以上, 歯髄組織においてPAFの生成系, 分解系, そしてPAF受容体が示唆され, その生理的, 病態時での役割が重要な検討課題として残っている.
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