本年度は研究計画課題を、歯髄組織においてPAFが何らかの生理活性を発現するかということに焦点をあて、歯髄PGI_2及びTXA_2生合成系との相互作用を検討した。ラット切歯より摘出した歯髄組織をPAFで刺激すると用量依存的にPGI_2及びTXA_2産生を促進した。しかしその用量依存性、経時的変化は2つの代謝物でことなっていた。特異PAF拮抗薬であるBN52021、CV3.988はPAFによるPGI_2及びTXA_2産生促進作用のみを抑制し、TXA_2に対してはわずかに抑制しただけであった。このことは、PAFの促進作用に関与するその受容体の性質がPGI_2とTXA_2とでは異なっていることを示唆している。次にPAFの作用における外液Caの役割を検討した所、PGI_2産生促進作用は外液Ca除去により完全に消失したのに対し、TXA_2に対する作用は消失しなかった。しかし細胞内Caを涸渇させた役にPA Fで刺激すると、PGI_2はもとよりTXA_2産生促進作用も完全に消失することから、PAFにより促進されるPGI_2産生は完全に外液Caに依存するのに対し、TXA_2産生は主に細胞内Caに依存することが明らかとなった。さらに細胞内Ca拮抗薬TMB-8、プロティンキナーゼc阻害剤H-F、カルモジュリン阻害剤W-FのPAFの作用に対する影響を検討した所、PAFのPGI_2 びTXA_2産生促進作用にはプロティンキナーゼc関与することが示唆された。一方、歯髄組織は血管系に富んだ組織であることより、PAFが血管内皮細胞を活性するかを直接検討するために、ヒトサイ帯静脈より内皮細胞を単離培養し、細胞内Caを測定した所、PAFは特異的受容体を介して内皮細胞を活性化することが明らかとなった。これらのPAFの作用の病態における意義を明らかにすることが今後の検討課題である。
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