本研究ではまず、ウサギ洗浄血小板を用いたPAFのバイオアッセイ糸を確立し、絶対量2.5pgのPAFから定量が可能となった。そこでラット歯髄組織をCaイオノフォ-A23187で刺激し、抽出物について血小板擬集能を測定した所、非常にわずかであるが擬集活性が検出された。この擬集活性はいくつかの理由によりPAFであると同定されたが、アセチルCoAなどでは促進されなかった。また、[^3H]ラベルPAFを歯髄とインキュベートするとリゾPAFやアシルGPCに分解された。一方、歯髄組織は血管系に富んだ組織であることより、ヒトサイ帯静脈より血管内皮細胞を単離培養し、PAF産生能を調べた所、トロンビン、ヒスタミンなどの刺激により活発にPAFを産生した。しかし歯髄組織をこれらで刺激してもPAF産生は認められなかった。従って歯髄組織はその活性は非常に低いながらPAF産生能を有することから、今後の課題は炎症性歯髄組織に於てPAF含量あるいは産生能が増加するかを検討することである。次に歯髄におけるPAFとアラキドン酸代謝系との相互作用を検討した所、PAFはPGI_2及びTXA_2生成を促進することが明らかとなった。その作用は特量的受容体を介するものと思われるが、その受容体の性質は同一ではないことも示唆された。またPAFの促進作用におけるCaの関与の違いより、詳細で促進機構はPGI_2とTXA_2とでは異なることも示唆された。一方、ヒト血管内皮細胞をPAFで刺激すると細胞内Caが上昇することより、PAFは内皮細胞活性化作用がりることも明らかになった。以上の研究成果を考察すると、歯髄な血管系に富んだ組織であることよりその病態時には内皮細胞が活発にPAFを産生し、それは歯髄のアラキドン酸代謝系と相互作用することにより歯髄炎の発現機構に深く関与することが考えられ病態時におけるそれらの証明が今後の重要な検討課題である。
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