研究概要 |
本年度は、プロスタグランジン(PG)E_2の骨吸収促進作用がどのような機構で行われているかに関し検討を行なった。単離破骨細胞にPGE_2を処理すると、細胞はむしろその機能を低下させることが知られており、破骨細胞への分化、増殖に対しPGE_2は促進的に働らいていることが予想された。最近、マウス骨髄細胞を長期間培養すると破骨細胞が出現することが明らかとなったので、この系を用いてPGE_2の作用機作の解明を試みた。PGE┣D22処理は、明らかに破骨細胞数の増加をひき起こした。そこでこの作用を詳細に検討したところ,PGE┣D22┫D2は前破骨細胞に働らき、非特異的エステラーゼ陽性細胞を酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性細胞にすることが明らかとなった。しかも興味深いことにPGE┣D22┫D2の作用はアルカリホスファターゼ陽性骨芽細胞の存在が必須であり,PGE┣D22┫D2以外のカップリングファクターが骨芽細胞から産生放出されている可能性が示唆された。 一方、他のアラキドン酸代謝物に関してもPGE_2同様の骨吸収系においてその活性の比較を試みた。1988年ロイコトリエン(LT)B_4にPGE_2よりも強い骨吸収活性があるという報告がなされたが、我々の所で、LTB_4、C_4、D_4、トロンボキサンB_2、種々PGの単独、組み合わせ実験を行ったところ,骨吸収活性が認められたのは、PGE_1、E_2とI_2のみであった。このことは、従来我々が報告してきたように、PGの骨吸収促進作用は、サイクリックAMPを上昇させる結果であることを意味していると思われる。 今後、サンクリックAMP依存性カップリングファクターが何であるかに関し、単離精製を行ない骨代謝を促進する因子の解明を行ないたいと思っている。
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