骨代謝に及ぼすアラキドン酸代謝物の影響に関しては、プロスタグランシン(PG)E_2が骨吸収を促進することが知られているが、その機作は明らかでない。そこで私は、骨代謝に関しアラキドン酸代謝物がどのような作用を持っているかから研究を行った。その結果、PGE_1=PGE_2>PGI_2D 他のシンクロオキシゲナーゼ代謝物、ソポキシゲナーゼ代謝物とも全く骨形成促進作用も、骨吸収促進作用も認められなかった。そこでPGE_2に重点をあてPGE_2の骨代謝に及ぼす影響及びその作用機作の解明を行った。PGE_2産生細胞の同定を行う目的で骨組織周辺細胞についてその合成活性をしかくしたところ、骨芽細胞が他の細胞に比較しより強いPGE_2レセプターが存在するかどうかを調べたところ、骨芽細胞にはPGE_2レセプターが存在することが確認された。一方、マウス骨髄細胞を長期間培養すると破骨細胞の出現が認められたので、この系を用いてPGE_2の作用機作(骨吸収)の解明を試みた。PGE_2処理は、明らかに破骨細胞数の増加をひき起こしたが、その作用点は非特異的エステラーゼ陽性細胞から酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性細胞への分化過程であることが明らかとなった。しかし、このPGE_2の分化促進効果は、前破骨細胞系だけでは起こらず、アルカリホスファターゼ陽性細胞(たぶん骨芽細胞)の存在が必須であった。 以上のことより、骨代謝に及ぼすアラキドン酸代謝物の役割を考えた場合骨芽細胞に何らかの刺激が加わった際、骨芽細胞よりPGE_2の放出が起こり、このPGE_2が自分自身に再び働き、その増殖を促進したり、未知因子を放出し、この因子により破骨細胞への分化、増殖が促進され、骨代謝が亢進されるものと思われる。
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