S.mutansが作るグルカンは歯垢形成に重要な役割を果たしている。本研究では口腔内常在菌の一つBacteroides oralis Ig4aが産生するα1 6グリカナーゼ(デキストラナーゼ)の遺伝子に着目し、遺伝子のクローニングと遺伝子構造・発現の解析を行った。得られた成果は以下の通りである。【○!1】B.oralis Tg4aのgenomic libraryを作成し、デキストラン分解能を示すクローン(pGI1)を得たこのクローンは B oralis Ig4a由来の4.2kbのDNA断片を保持していた。 【○!2】pGL1に種々の欠失挿入変異を導入し解析したところ、左端から0.9-2.2kbの間の領域は活性発現にとって必須の領域で、左端から3kbから右端までの領域は活性発現に必要なかった。 【○!3】そこで左端から3kbまでの領域の塩基配列をSanger法を用いて決定した。その結果、左端から2208塩基に始まる終止コドンまでOpen Reading Frame(ORF)がつながっており、このORFに典型的なシグナル配列は見い出させなかった。なおこのORFから合成されるタンパク質の分子量は82キロダルトン(kd)と推定された。またB oralis Ig4aの44kdのデキストラナーゼ蛋白質のC末端のアミノ酸配列はLeu-Leu-MetでORFのC末端と一致した。 【○!4】B.oralis Ig4aで産生されるデキストラナーゼの最も大きなクローニングされたデキストラナーゼ遺伝子は3'側の一部であり、B.olralis Ig4aではまず105kd蛋白質として合成され、44kd蛋白質にプロセスされる可能性が示唆された。
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